
副園長・主任ゼミナール
あたたかな保育はあたたかな職員集団から
職員が安心して意見を出し合い支えあえる職場づくりを目指し、
信頼関係の構築、困難な人間関係への対応、チーム再構築の視点から、
コミュニケーション基盤の整え方を実践的に学びます。
講師:平松知子
社会福祉法人熱田福祉会 理事長
副園長・主任ゼミナール
質問への平松先生からのご回答
ゼミに参加された方の質問に平松先生からご回答をお寄せいただきました。
とても明快且つ的確で、大変ためになる内容でした。
平松先生からも、ぜひ全員で共有できるといいと思うとのことですので、こちらのページに掲載させていただきます。
なお、掲載にあたり内容については編集させていただいておりますことご了承ください。
平松先生より
「一生懸命回答しました。…中略…これはぜひ全文を全員が読めるといいと思います。
園長も主任たちも発達途上の段階です。みんなで『どうありたいのか』を追究していってもらえるいいと思います。」
Q1 若手職員の勤務態度について
周りの職員から再三言われても、遅刻やギリギリ出勤が改善されず、頭を抱えてしまいます。それでも諦めずに受け入れていこうとしていますが、その職員は改善されていくのでしょうか?
A1 本人の客観的認識ができているのかどうか?事実の確認(記録で見える化)をしてみるのはどうでしょう?
例えば、5分前には保育に入れる状況で現場に向かっていることを確認したのなら、カレンダーで達成された日は〇、ギリギリになっちゃったら△、とまずは、本人と「私も把握したいからいっしょにやってみようか」と確認して、意識化をしてみる。①ギリギリが1日くらいの週は「今週はちゃんとできたね」②△が数回あったら、「体調は?」「就寝は?」「生理痛?」などと原因をいっしょに考えてみる➡対策へ③△や×が改善されないことが1か月続いたら、業務改善命令を園長からでしょうか?ポイントは本人が「5分前くらいには現場に立った方が良い」と思えているかどうか?なので、自分がギリギリになると、だれが困っているのか?を最初に丁寧に(責めるのではなく)確認し合えるかどうかだと思います。「〆切や遅刻は、社会的信頼につながるからね」と私はよく声を掛けます。
Q2 自己肯定感の低い中堅職員への関わり方
一緒に仕事をしている正規職員は、とても丁寧な仕事をしてとてもがんばっています。それなのに、自分はこの仕事に向いていないと周りの職員につぶやいています。ところどころで褒めて自信に繋げていけたらと思っているのですが、本人は自己肯定感が薄いようです。そんな職員のモチベーションをあげるには、園長、副園長はどのように対応すると良いでしょうか?
A2 そういう方っていますよね。結局自分が実践で手ごたえを持てるかどうかなのです。
周囲の誉め言葉は、「本当にそう思っているのか?」と疑心暗鬼になりやすいようです。子どもたちの満足度、保護者からのポジティブな声などを、“さりげなく”(ここポイント)伝えてみると良いのではないでしょうか?
Q3 ご講演について
資料になかったパワーポイントの資料なども頂ければ良いと思いました。保育者が笑顔で保育ができる環境つくりを考える良いきっかけとなりました。また講演会に参加させて頂きたいです。ありがとうございました。
A3 ありがとうございました。
Q4 ベテラン職員の声かけの硬さについて
ベテランの先生の凝り固まった声かけに悩んでます。気付けるように色々やってきましたが、やはり本人に直接伝えるしかないのかと思っています。直接言わない方法があればお聞きしたいです。
A4 不適切保育の事例研修を職員で行う中「そんな風になっちゃうことってあるよね」という雰囲気の中でも、「でもこれらはアウトなんだね、ブラッシュアップしようね」と周知徹底する。そのあと、現場(その場)で「あれ?今のなんて言っていた?」「びっくりしたよ」と口頭ですぐ言う。
こちらは記録をする。どのようなシチュエーションでそうなってしまったのかも含めてメモ。再び起こった時は、「この前と同じだね」「こういう状況の時にそうなりやすいのかもしれませんね」と客観視の手伝いをしてあげてください。「あなたを守るために力になりたい」がポイントです。
Q5 特性のある職員への支援について
以前の職場に特性ゆえに困りごとがあると感じる職員がいました。私はその職員の困り感に寄り添い、失敗を減らす仕組み化をしたり、出来たことを褒めたりして良好な関係を築きました。その成果は目覚しく、周りからも彼女の成長を評価してもらえた1年となりました。しかし、更にもう1歩踏み込めず、受診を勧めたり、職場の皆が彼女を理解し協力する風土を作れず、本人もとても自分をオープンに語れるとは思えませんでした。そのため翌年は、チームワークがうまくとれなくなってしまったようです。私はどうすればよかったのかと思っています。
A5 指導部集団で共有ができていたのか?がポイントとなります。
理解者が一人いるだけでは足りないのです。職員集団全体でのフォローが必要な場合は、相談者おひとりが分かっているだけでは、いなくなればそれまでになってしまうからです。支援が必要な職員への配慮を、集団指導体制でフォローアップできるかどうかです。
ずっと誰かに支援されなければできない状況があることは、本人の困り感を面談ではっきりさせて”記録”による客観視をしましょう。ずっとそのままでいいわけではないので、見通しを区切って、本人の“どういう先輩になっていきたいのか?”を突き合わせます。今の職場でそれが難しかったら、もっと小規模なところがいいのか?担任ではなく子育て支援なら良さが発揮されるのか?など、本人の今後の働き方も見据えて、保育のしやすい職場をいっしょに探るのもありだと思います。
Q6 職員・保護者・自分自身が大切にされる園づくりについて
本日は素晴らしい講演をありがとうございました。このようなお話しを聞くことができ、有意義な時間となりました。子どもたちはもちろん、職員も保護者も自分も、大切にされていると実感できるような保育園を、職員全員で作りたいと強く思いました。大変な事や嫌になることもありますが、この仕事の楽しさを伝え会い、改めて実感できたらいいな、と思っています。
A6 ありがとうございました。
Q7 変化を恐れる職場風土の改善について
とても貴重なお話をありがとうございました。共感できる点、これからの課題など、様々な視点から改めて考え直すきっかけを頂いたように思います。先生の講義の中にありました『無謬性』につきましては、日々仕事をする中で私も常に学び続け、今このやり方で本当によいのか?と日々変化していくことを大事にしておりますので、とても共感できました。
現在の職場ではみんな意欲的で、大きな問題なく仕事ができておりますが、一点、大きな 課題であると感じている点があります。それについて先生のご意見が聞けたらと思いましてこちらに記させて頂きます。
課題として挙げられるのは「変化することを恐れる風土が強い」ことです。「昨年まではこうしていた」「今年これをやると来年もやらなくてはならない」「これまでずっとやってきたことを辞める(もしくは新しくやる)となると保護者の反応が怖い」などの理由から、変化を極端に反対する職員が多いので、なかなか業務改善に至らない点が課題であると感じています。
理由を聞くと分からないではないのですが、「今年これなら来年もやらなくてはならない」といった考え方が抜けない風土が気になります。このような職場の風土をどのように意識改革していけばよいのでしょうか?ご意見頂ければ嬉しいです。よろしくお願い致します。
A7 ドラッガーの「無謬性」は、私も思い当たることが多々あり、同時にこの戒めを持つことで、変化を楽しめるように自分が変化したのを感じます。
「今まで通り」は安心なのか?誰が?答えは子どもではなく、大人が安心なだけですよね。あれ?私たちって誰のために存在してるのだっけ?子どもだよね?です。
無謬性という言葉を学んだことを、みなさんが職場でちゃんと伝えて、学習するところから始めてみてほしいと思います。
Q8 不機嫌ハラスメントの疑いがある場合の対応
ご講演ありがとうございました。自分の得意不得意があるなかで、今後は不得意と思うところも少しはよい方向に進めていける学びをしていきたいと思いました。
不機嫌ハラスメントを受けている話を、本人以外から聞いていて、保育に入りながら様子を見ていました。しかし、行っている姿を実際に目にすることがなかった場合、双方にどのような対応をしていけばよいのか…と思っています。体験談や、事例等ありましたらお伺いしたいです。
A8 A1・4・5と同様「事実の確認」「記録で見える化」「客観視の援助」につきます。
まず訴えてきた職員の聞き取りを丁寧にする(記録)
私の法人では、ハラスメントの窓口があって、記録用紙を作っています。時刻・場所・どんな経緯で・その時当事者はどう感じたのか?その記録ファイルをもとに、聴き取った職員は何を望んでいるのか?です。「名前を出してもいいから指導してほしい」がいちばん助かりますが、名前を出してほしくない場合は、周囲の人に状況を聞いてみて、周囲もそう感じているようだったら、「通りかかった職員が(保護者が)」びっくりしていたんだけど、ちょっと同じクラスの人たちにも話を聞いてみてもいいかな?」と該当者本人にまず声をかけ、いっしょに組んでいる職員全員に(パートも含め)聞き取り面談をします。
その後園長の面談となります。これはハラスメント案件なので「管理面談」になります。3か月で改善を目指してください。
Q9 若手職員が保育を楽しめない状況について
若手職員が保育を楽しいと感じているのかわからず、良かれと思う事が裏目になってしまうこともあり、一緒に楽しみたいのに難しいと感じる事が年々増えています。保育って楽しいね!と伝えるのはおせっかいなことなのでしょうか?
A9 「感情はむこう持ち」です
相手の「たのしい」はこちらでコントロールできないので、周囲は自分たちが「子どもにとっての最善を追究する」だけで十分です。楽しさを感じられるかどうかは、本人にかかっています。楽しさを感じられない職場にずっといることは、本人にとっても苦痛でしょうから。
「感情はむこう持ち」は、反対に「こんなことを言ったら傷つくのでは?」のときも発揮されます。先輩として必要な指導を客観的に(感情的にではない)伝えた後は、くさろうと、悲しく思おうと、「感情はむこうもち」 なので、「大丈夫だったかしら?」とか気にしすぎるのは良くありません。
そこから立ち直るのかどうかは、転んだ子が自分で立ち上がるのかどうかと似ています。温かく見守って、立ち上がってきた次の実践を、心底ほめてあげられれば十分です。
Q10 保育観の違う担任同士の調整について
とても良い講義を伺えて最高の時間を過ごすことができました!もっともっとお話ししてほしかったです。 教えてください。
同じクラス担任で子どもの事を考えてアイデアを出して保育を楽しんでいる保育士2人がいますがキッチリしたい派と自由な感じでのびのび派で分かれてしまい、補てんに入る会計年度職員が迷ってしまいます。
どっちが正しいわけでは無いけれど、いない先生がいる時に、今日はできるね。と子どもの頃から大人の顔を伺わせてしまう。そんなのは、子どもがかわいそうだわぁと…
A10 「こどもがかわいそう」周囲がよく感じてしまう思いですが、そんな時私はその時の園長から「ひらまっちゃん、子どもって結構たくましいのよ」と笑って「いらぬお世話をするな」と指導された経験があります。
「わたしならもっといい保育ができるのに」という感情にもつながるので、まずは、担任同士を信頼して任せましょう。補佐職員の困り感や子どもの困り感があるときは、8に書いたような「事実の見える化」の援助をサポートしてください。
Q11 困り感のある職員への気づきの促し方
ありがとうございました。主任になってからまだ年数が浅く体制把握や調整に日々苦戦する中、先生のお話はとても参考になりました。今更なのですが、思い出したことがありお伺いします。
困り感のある職員の話の中で、自分の状況に気がついて、周りも配慮しながら一緒に保育してるという話が、とても印象に残っています。いくら伝えても伝わらない(忘れてしまう)職員に対して、自分の困り感の原因に気づいてもらうために、周りはどのような働きかけをするのでしょうか?
困り感のある子どもに対しては相談を勧めたりしますが、大人の場合はどこで診てもらう(相談)のでしょうか?病院などで検査するようにお話するのでしょうか?
A11 5と8を参照してください。
カウンセリングができるメンタルクリニックで相談しながら、心理検査(知能検査や適応能力検査)に進められるといいと思います。
私たちがよく出会うのは、「成人用WAIS」です。WAISを通して、全体的な知的能力(全検査IQ)、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度を測ることができます。また全般的なIQだけでなく、個人内での能力のばらつきなどを分かりやすく知ることができるのが特徴です。
マルチタスクを求められる保育の現場がつらい人は、この結果を受けて転職を早めにさせてあげた方が、本人の人生のためにも大切になると私は考えます。
Q12 向上心が見えない若手職員への関わり方
本日はありがとうございました。先生のお話し一つひとつに頷きっぱなしでした。それと同時に自分が今していることは間違ってなかったんだなぁと自信になりました。先生にお聞きしたいことがあります。
ある若手職員はクラス担任ですが自分から遊ばせることができず傍観者になっているところがあり、担当児の良いところがすぐには出ない感じです。また話の内容によってはごまかす、向き合わない。このようなタイプに少しでも前向き?になれるような声かけ、指導内容は何かありますか?
あの手この手をしてきているのですが、なかなか手強く。でもやってもらわないと安全な保育が守られないこともあり。よろしければお願いします。
A12 私だったら、その職員の「職場で一番話がしやすい先輩」になれるように保育以外の話や生い立ち(意外と影響が色濃い)の話もしながら仲良くなることをまず心がけます。
そのうえで、やっと本人の困り感が見えてきたら、11のような対応になることが多いです。
また、ただ定時に出勤して退勤するだけのような職員になっていきたいのか?も問うと思います。そのままで定年までうちの法人にいるのは、とてもつらくなると思うけど?みたいなことも“友達”として話します。私がそのような立場になれていないときは、本人にとってそんなことも言ってくれる頼りになる同僚から、そういう内容の話をしてもらいます。
そのままでいいと思わせてはダメです。子どもに失礼です。そういう大事な仕事を私たちはしています。
Q13 園長との関係性・職場改善について
平松先生のお話しを聞きながら「本当にその通り」「今の職場は、やはり働きにくい」と思うことばかりでした。今回のゼミでのグループ討議で「働きやすくなるかどうかは、園長次第」という結論になりました。
例えば以下のような園長がいて、主任(または主査)が意見を伝えても上手くいかない場合はどのようにすべきか、先生のお考えをお聞かせください。
・「主体的保育」を行っていると公言しているが、職員は管理的保育を行っており、それに対して指導はしていない
・不適切保育を報告すると「その人は思いがあって対応しているのでしょう」と返された
・行事や係の仕事など、全てに自分の考えを伝えその通りにさせようとする
・夏休を、役所の指示より少ない期間で取るように職員に促す
・事務所で保護者の悪口を言う
A13 そのような場合、職場の内輪話にしていてはいけないと感じました。
主任や主査からの助言に耳を傾けられないのであれば、「区としての指導面談」が必要な段階だと思います。その区にハラスメント窓口やシステムがあったとしても機能不全に陥っているのならば、そこの区は、“不適切保育の温床を育てている”ことになります。子どもの虐待の視点から見ても「犯罪一歩手前」「もう少ししたら新聞記事になる事案」とその区が考えられるかどうかだと思います。
あなたが、告発者となるのか、同じような思いがある職員がいるのならば、「集団の声」として担当課に伝えるのが、責任の果たし方だと思います。泣き寝入りして一番被害を受けるのは子どもたちと保護者です。こういう声を、しっかりと受け止められる東京都担当課であってほしいと思います。
Q14 不機嫌ハラスメントなどの課題が改善しない場合の伝え方
先生のご経験に基づいたお話ありがとうございました。グループディスカッションでも、同じ立場のみなさんが、同じようなことで悩み、様々なアプローチをされていることがわかりました。我が園でも、不機嫌ハラスメントをはじめ、人によって態度を変えるなど、いくつかの課題がみられます。その都度ヒアリングを行ったりクラスに入って様子をみたりしていますが、改善には至っておりません。
伝えかたは1つや2つではないことはわかっておりますが、本人の心に届く伝え方で何かあればお教えいただけますでしょうか。
A14 A8をご参照ください。